鹿島アントラーズ  天皇杯4回戦

注意:
ここから先はダラダラとダービー前の情景が続きます。
試合の感想だけ読みたい方は「キックオフ。」から
お読み下さい。

さまざまな大人たちのさまざまな思惑から仕組まれた試合。だがその不透明さが土建屋自民党の王国・茨城県を代表する両チームの初対戦には、むしろふさわしいのかもしれない。灰色のダービー。


快晴。天気の良い日はそれだけでモチベーションが上がる。レインコートを持たずに出かけられるだけで嬉しいし。途中、コンビニで隆行が表紙のNumberを買う。


午前10時、笠松競技場に到着。いつもの癖でキックオフ3時間前移動をしてしまい、開門1時間前。それでも既に自由席・SAゾーン指定席共に長蛇の列。警備員、係員も数多い。こんな笠松を見たことがない。


レジャーシートを敷き、Numberの隆行と大久保と佐藤琢磨と高津の記事だけ読む。


待ち時間に水戸の職員が登場。「鹿島サポーターの皆さん、これを機に水戸ホーリーホックも宜しくお願いします。」と言った後にファンクラブ入会の案内を始め出した。貪欲で良し。1000人に声掛ければ1人入るかもしれないからね。


その後に景気悪い面をした鹿島サポーターの若い男女が投げやりな声で「カレンダー買いませんか〜」と言いながら行ったり来たり。暴力集団IN FIGHTの下っ端ども。一番重要な「IN FIGHTの」カレンダーであるという情報を姑息にも隠して売り歩くのはいつものこいつらの商法。過去に一度騙されて買ってしまった。もちろん確認をせずに買ってしまった僕に責任はある。けれど、これを機にこいつらを蝿よりも嫌いになったのもまた事実。極めて不愉快。


開門。ゲートを通ってすぐのところに新潟中越地震への募金箱。担当している高校生くらいの少年が元気に募っている。水戸は本当にわかっていない。女の子だろ!女子高生だろ!ミニスカートだろ!まあそんな僕の健全な欲望はさて置き、4人も居るんだから半々にすべきだと思う。そうすりゃ客が勝手に萌えたり腐ったりするんだから。


陸上競技場のため、ゴール裏ではなくバックスタンドの鹿島ゴール寄りに座る。赤い人のほうが青い人よりも倍くらい多い。キックオフまでには差はもう少し埋まるだろうけれど、正直青い人の出足が読めない。このまま鹿島ホーム化してしまうのだろうか。


それにしても、鹿島のゲームを横から観るのは、一体、何年ぶりなんだろう。初めて観た試合でのアルシンドのゴールを思い出した。ちょっと感傷。今日の見所は目の前を駆け上がる新井場だ、とこの時に決める。


いい気分を件のIN FIGHT集金部隊がぶち壊す。「カレンダー買いませんか〜」と抑揚のない声で繰り返す様はただただ不気味。おそらくノルマに届いていないのだろう。それも当然。もはやこいつらのことを信用している人間などほとんど存在しないのだから。こいつらの悪行は誰もが知っており、決して忘れることはない。自業自得とか因果応報とかいうやつ。


売店には笠松とは思えない量のフードが。ボランティアたちも気合満々。客以上に興奮しているのではってくらい。みんなきびきび動いている。楽しそう。かわいい娘も発見。満足して男どもに募金。嬉しそうに「ありがとうございます!」と応えてくる。こちらこそ募金させてもらいまして。この時から女子トイレには長い列が出来ていた。要改善。アジアンハンバーグサンドを買って席に戻る。美味い。


晴天の下、選手たちがアップに出てくる。メインにもバックにもシャツ投げ。アウェーなんだけどね。ガキの集団が練習中の選手たちの名を次々と呼んでいる。特に小笠原を呼ぶ声に気合が入っている。子供たちのアイドル、小笠原。みんなサッカー大好きなんだろうな。上手くなれよ。


このころになると青い人たちの割合が相当増えていた。最終的には4:6くらいになっていたと思う。水戸側ゴール裏が初めて真っ青に染まっている光景は感動的だった。開幕戦でタダ券とK'sジャンパーを配りまくったのは無駄ではなかった。全てはこの日のためだったのだ。*1


選手紹介。ゴール裏はトニーニョ・セレーゾにブーイング。水戸の選手にもいつも通りブーイング。栗田にも当然ブーイング。待て。最後のは特に意味不明だ。かつての超主力だった秋田とか鹿島を離れてから活躍した森岡などへのブーイングならばまだ、まだ多少は理解しようと思わないこともない。だが全盛期に負傷した増田忠俊や放出された栗田のような選手に対してなぜブーイングするのか。元気でまた会えた彼らには拍手を送るべきだと僕は思う。


選手入場。鹿島アントラーズの選手たちと水戸ホーリーホックの選手たちが並んでピッチに出てくる。そして両チームの選手たちが横一列に並び、最後にしかおとホーリーくんが一緒に登場し、列の両端に並んだ。この単純な演出に僕は何故かいたく感動してしまい、ああ、メインの席から写真撮りたかったな、と心から思った。


その後、茨城県出身者への花束贈呈がされた。県民の日ですから。鹿島からは曽ケ端、小澤、野沢、隆行。水戸からは木澤、北島、磯山。鹿島の方が多いのはちょっとした驚き。予想していた県知事の挨拶はなく写真撮影に移る。この時「写真撮影を行いますので選手たちは集まって下さい」のアナウンスが。誰もが心の中で「いや選手は知ってるだろ!」と突っ込んだことであろう。


鹿島の選手たちが鹿島サポーター側に、水戸の選手たちが水戸サポーター側に散らばる。スタンドもピッチ上もディープレッドとディープブルーに分かれる。そしてホイッスルと共に赤と青が混じり合っていく。水戸のチームカラーはこの瞬間まで想像して選ばれたのだろうか、とふと思った。

キックオフ

ゲームの大まかな流れは鹿島がボールを持って水戸が待ち構えるというもの。鹿島は後ろでボールを回し、ある程度フリーになった選手が居てもリスクを冒したパスを出さず、結果的に放り込み、ってないつも通り。そして中盤やSBがバランス崩して前に出たところでパスミスしてカウンターでサイドを一対一や二対一で攻められる。いつも通り。だがそれはJ1チームに対するいつも通りであって、それをJ2下位の水戸がプランを徹底して遂行したというのは賞賛に値する。水戸の攻撃は数少なかったが、チャンスの目を掴んだ時にはそれを常にチャンスへと結びつけていた。早い時間帯で隆行が決定機を外し、そして最初のカウンターチャンスでシュートまで持っていけたことが「やれる」という自信に繋がったのだろう。鹿島は本山も決定機を外し、どちらかというと水戸寄りの膠着状態のまま前半終了。鹿島の選手は芝に慣れず、足を滑らしたりシュートをふかしたりするシーンが続出した。


ところで前半に水戸の磯山が負傷交代するアクシデントがあった。この時、うずくまる磯山に向かって鹿島ゴール裏から「さっさと出てけ!」の罵声と共にブーイングが起こった。そのブーイングはもう間抜けとしか言い様の無い、酷く醜いものであった。バックスタンドの観客は失笑。サル山を観るような視線。「★ね」というつぶやき。それらを一言で纏めるならば「拒否反応」って言葉がふさわしい。あれは病気だね。脊髄ブーイングってのが病名。この病気移るんで、治るまで家から出ないで下さい。


後半、交代無し。グダグダも変わらず。深井に楔を入れようとするがそれを感じられないってシーンが何度かあった。ボールを動かしたいのに意図が全く合わず、選手のイライラがつのる。監督の修正が無かったのかあっても間違っていたのか。少なくとも役に立っていないのはわかる。そして、ファールをとってもらえなかったことをきっかけに隆行がキレる。


隆行が全てのボールの楔になろうとし出した。深井が居ても、どかしてポストに入る。本山が近くに居てもボールを離さない。ディフェンスが何枚つこうとも気にせずにキープし、振り向いてしまう。だが、その常識外れのプレーから鹿島はようやく起点を作れるようになった。深井はサイドへの飛び出しだけを狙い始めるようになり、さらに小笠原が完全にレジスタとなって、センターサークル付近で前を向いてボールを前線やサイドへと散らすようになった。リスクを冒さないフェルと違って早いタイミングでボールを出してくれることによって青木と新井場が高い位置でボールを持てるようになり、水戸を押し込むことが出来るようになった。薄くなったエリア内へはフェルや中田が飛び込んでいく。後半半ば、選手たち自身の修正でようやくチャンスを連続して作り出せるようになった。その流れの中、セットプレーのこぼれ球を中田がネットに突き刺す。


先制点さえ取ればこっちのもの、追加点でゲームセットだ!と思っていたら鬼に変わった隆行が野沢に交代。しかも本山をFWに上げて中盤を右から野沢、小笠原、中田、フェルとフラットに並べる。水戸がサイドを2人で突いて来るのを恐れた交代。だが野沢、フェル両名の守備力が足りず、青木、新井場とのコンビもガタガタで何度も突破されるようになってしまった。なんとか弾き返しても隆行が居ないためボールが全く収まらず、波状攻撃を受けるようになってしまった。深井を中島に変えてちょっとだけマシになるが水戸の勢いを止めることは出来ず、左を関に、右を交代出場の伊藤にチンチンにされるという目を覆うような展開。なんとか、たまたま、幸運にもゴールを割られることなく試合を終わらせることが出来た。



感想としては「水戸はチームだったが鹿島は単なる個の集まりだった」ってのに尽きる。選手同士で話し合ってなんとかコンビを作ろうとしているのはわかるし、それが上手くいったこともある。例えば本山が左サイドのスペースにあえて入らず、新井場をそのスペースに走らせたシーン。フィニッシュには至らなかったが綺麗な崩しで、本人同士もプレー後にタッチしていた。けれどこの試合を通して見ると監督がどのような攻撃をさせようとしているのか、どのような練習を積んでいるのか、そもそも本当に積んでいるのか、何一つ伝わって来なかった。


選手交代にも疑問が残る。隆行を下げる理由は見当たらなかった。野沢は今期ほとんどFWで出場しているというのに、怪我からの復帰戦でディフェンシブなサイドハーフという未経験のポジションで使うという意図が未だに理解出来ない。ただでさえゲーム感が落ちているというのに。どうしてもサイドに蓋をしたいのであれば本田を入れて小笠原を右サイドに戻すべきであったし、以前のトニーニョ・セレーゾならばそうしていたであろう。それが出来なかったのはフロントの査定を気にしたのかそれとも選手やサポーターに媚を売ったのか。いずれにせよ言えるのは、自らの手法・哲学を信じられなくなった時点で彼は既に監督ではない、っていう事。彼を監督の椅子に座らせておくのはもはや害悪であるとすら思う。一日でも早い解任を望む。

ダービー終えて。

13000人の観衆の前で、残念ながら得点を挙げられなかった水戸。けれども懸命に走り、恐れずに代表選手たちに喰らいつく姿には胸を打つものがあった。ダービーを強烈に意識していたのは彼らだった。彼らは大観衆の前(しかも約半分がホーリーブルー!)でプレーする喜びを存分に味わい、楽しみ、力を出し切ったことだろう。試合後のコメントで栗田は「引退した時に一番印象に残る試合になるのかな、という試合でした」と語っている。水戸は試合にこそ負けたが、観客に感動を与えるという大きな「プロの仕事」をやってのけた。


初めて行われた赤と青のダービーは、青の予想を遥かに上回る頑張りによって価値が跳ね上がった。ダービーを「チーム力で上回っていても簡単にはいかない試合」だと定義付けるならば、この対戦はダービーと呼んでも差し支えないものだった。鹿島の出来には不満が多いけれども心から楽しんだ一日だった。




書き忘れたこと。


5〜6歳くらいの水戸Tシャツを着た女の子が赤い人ばっかりの席を見て「ここ鹿島っぽいからやだ。」って母親に訴えて移動していった。あの本気っぷりからすると、きっと負けてめちゃくちゃ悔しがったことであろう。や〜い。



ただ単に忘れていたこと。


隆行とレジスタ小笠原に見惚れて新井場の上がりをワンプレーしか正確に覚えていません。



最後に。


ラストプレーで負傷した本山選手が軽傷であることを祈っています。

*1:実はこの日もジャンパーが配られたらしい。騙された!ケーズめ、やるな。