ユーロ2004


イタリア2−1ブルガリア

勝つしかないイタリアと敗退が決まったブルガリア(しかもキャプテンのスティリャン・ペトロフが出場停止)。序盤から支配するイタリアだがゴールには至らず、逆に前半終了間際にPK(キッカーはマルティン・ペトロフ)で失点してしまう。ブルガリアは予想以上に集中力が高い。

後半開始早々、カッサーノのシュートがバーに当たり、こぼれ球をペロッタが押し込みゴール。これで勢いに乗ったイタリアは怪我でスタメン落ちしたビエリを投入して猛攻を続ける。だがもう1点が奪えず、CBを削ってディバイオも投入。リスクを冒して攻め続ける。ロスタイム、イタリアはカウンターを受け、左サイドから右に移っていたマルティン・ペトロフにGKと一対一の状況を作られてしまうが、グラウンダーのシュートをブッフォンがストップ。自分が世界一であることを改めて証明する。

ロスタイム終了直前、ついについにカッサーノが決めて逆転する。喜びを爆発させてベンチへ一直線に走る選手たち。だが…。

表情が一変する。スウェーデン2−2デンマーク。何点とろうともイタリアは敗退する事を教えられたのだ。絶望。救国のヒーローだったカッサーノは数秒でその座を追われてしまった。まだゲームは終わっていなかったため選手たちは足取り重くピッチに戻って行ったのだが、一人カッサーノは座り込んで泣きじゃくっている。そして試合終了。

コメンテーターたちはさかんにカッサーノの姿に触れる。ヤンチャを通り越して単なるクソガキだったカッサーノはこの1年で立派な選手になった。残念ながら最後に人生の苦味を味わう事になってしまったけど、来シーズンにはさらに成長した姿を見せてくれると思う。

そしてもう1人、試合終了と同時にピッチにうずくまってしまった選手がいた。ブルガリアマルティン・ペトロフ。快足を生かしたドリブルと左足の強烈なキックを武器とする、ブルガリアの攻撃の中心選手であったのだが、結局チームは3試合で勝点0、得点たったの1点だけ。その責任を全て抱え込み、彼はうずくまったのだろう。

初戦のスウェーデン戦、1点ビハインドでむかえた後半早々、逆足の右足で決定的なシュートを放つも枠を僅かに外し、その直後2点を立て続けに取られて敗戦。デンマーク戦、前半終了間際にGKと一対一のビッグチャンス、しかしまたも右足でGK正面に力ないシュート。直後、トマソンに決められてそのまま敗戦。イタリア戦、PKを決めた時の喜び様は普通では無かった。だが追いつかれ、それでも試合終了寸前に左足でのシュートチャンスを得た(確認したら結局これも右足でした)のだがブッフォンに止められ、直後に逆転ゴール。

自分が決定機を外し、それが全て敗北につながるという巡り合わせ。マルティン・ペトロフにとっては悪夢の大会になってしまった。立ち直るのには時間がかかるかもしれない。だが、彼も(そしてチームも)まだ若いんだから、次が絶対にあると思う。お疲れ様。


スウェーデン2−2デンマーク


イタリアから「八百長するなよ」とプレッシャーを掛けられていたのだが、まるでそんな素振りのないエキサイティングな好勝負。トマソンの翼くんばりのドライブシュートに始まり後半ロスタイムの同点ゴールで終わるドラマティックな展開だった。両チームの選手・ベンチ・サポーターがみんな歓喜に包まれるという幸せな光景には感動した。その中で1人、勝利を逃したデンマークトマソンだけが厳しい表情でチームメイトに文句を言っていたのにもやや感動した。空気を読まず、どんな時でも全力なトマソンが大好きです。



宇都宮徹壱さんコラム。

少なくともこれだけは断言できる。今日の結果は、決して北欧2カ国の悪意によるものではない、と。もし悪意が存在するならば、それはフットボールの女神によるものだろう。そうまでして彼女は、イタリアに何かを訴えかけているのだ――そう私は考える。

カルチョが変わる日が来るのならば、是非それを見てみたいと思います。